国立大学法人東京農工大学
研究推進部 研究支援課
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職歴 | ・2009年4月~2011年3月:久留米大学医学部公衆衛生学講座 助教 |
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学歴 | ・東京農工大学農学部獣医学科 2004年卒業 |
受賞歴 | |
主な論文・解説 | (2017年1月現在) |
動物は生存し、繁殖して遺伝子を残すため、さまざまな行動形質を進化させています。たとえ一見生存や繁殖に不利な形質であっても、遺伝子を効率よく残せるなら、進化しうると考えられます。そのような形質の一つに、社会性昆虫における不妊のワーカーが挙げられます。
社会性昆虫とは女王やワーカーのようなカースト制を有する昆虫のことで、その代表ともいえるミツバチやアリはハチ目に属しています。ハチ目は単数倍数性という性決定様式を有しており、オスの染色体数はn、メスは2nとなっているため、同父姉妹間の血縁度が3/4である一方、異父姉妹間では1/4となり、女王が多回交尾する種では同一コロニーの個体間に血縁度の大きな違いが生じます。またオス-ワーカー間では、同じ個体間であってもオスとワーカーどちらの観点からみた血縁度であるかによって値が異なるという非対称が発生します。このような行動生態学的に面白い現象があるため、ハチ目昆虫の社会行動に関する研究は多いのですが、ハチ目昆虫と寄生者の関係についてはまだ分からないことがたくさんあります。他種においては寄生者が宿主を操作する例は多く、社会性ハチ目昆虫のような特殊な社会を有する種において、寄生者が宿主に及ぼす影響の解明は興味深いテーマだと思っています。ダニなどの寄生虫の他に、細菌やウィルス由来の因子などがハチ目に寄生していることが分かってきており、それらの因子が宿主を操作しているのか、カーストによって寄生に違いがあるのか等を調べることで、寄生者の実態解明を行っていこうと思っています。
テニュアトラック制度は、若手研究者が資金を援助され、設備の充実から始め、自分の研究を立ち上げて進めていくことができるという点で大変優れた制度であると思います。制度上、一定期間内に業績をあげることを求められますが、企業における利益追求型の研究とは異なり、大学における研究と教育においては、学問の継続的な発展や人材の育成に貢献することが重要です。私は、この制度を用いて研究を進めていく中で最も重要なことは、目先の成果だけではなく、大学ならではの研究と教育の発展に将来的につながるよう、この制度の利点を活用していくことであると考えています。
日進月歩で進歩する科学研究の中で自分の研究の位置を把握しながら、自己の研鑽を積むことのできる機会をいただいたと思っています。研究については上記のように進めていこうと思っていますが、教育に関しては農工大の学生が有する高い能力を発揮できる環境作りが第一に取り組むべき課題であると考えています。学生を含む教室員を研究チームとして機能させ、欧米の研究者と交流を持って研究を進めることで、研究成果を出していきながら、国際的に活躍できる人材の育成も同時に行えるような形を作ることができるように努力していきます。