国立大学法人東京農工大学
研究推進部 研究支援課
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渡辺 誠 (Watanabe Makoto)
研究院 | 農学研究院 |
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部門 | 物質循環環境科学部門 |
研究分野 | 環境生物学教育研究分野 |
キーワード | 大気汚染、樹木生理生態学、光合成 |
URL | http://web.tuat.ac.jp/~m_nabe/home.html |
職歴 | ・2001年04月~2003年12月:株式会社シー・アイ・シー 食品環境事業部 |
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学歴 | ・1999年3月:東京農工大学 農学部 環境資源科学科 卒業 |
受賞歴 | ※最新情報は教員のWebサイトをご覧ください |
主な論文・解説 | ※最新情報は教員のWebサイトをご覧ください |
対流圏におけるオゾンは植物に対する毒性が高いガス状大気汚染物質です。経済発展が著しいアジア地域ではオゾンの原因物質の排出量が急増しており、越境大気汚染に伴って日本のオゾン濃度が上昇していると考えられています。森林の樹木は光合成を起点とした二酸化炭素固定機能によって、地球温暖化の低減に貢献するとともに、木質バイオマスを始めとした我々の生活に必要な資源を供給していますが、対流圏におけるオゾン濃度の上昇によって、その機能が損なわれている可能性があります。したがって、我々の生活を支える健全な森林を守る為、そしてオゾンの原因物質の排出量削減対策の為にも、樹木に対するオゾンのリスクの適切な評価が必要です。
従来の樹木に対するオゾンのリスク評価は、苗木を用いた実験的研究から得られた積算オゾン暴露と樹木の成長との関係などに基づいて行われてきました。しかしながら、この方法では様々な環境(気温・日射量など)が変化する野外への応用において、不確実性が大きいことが指摘されています。これを解決する為には気孔を介した葉のオゾン吸収から樹木個体あるいは群落に対する影響までを考慮に入れた、樹木生理生態学的プロセスを踏まえたモデル、すなわちプロセスベースモデルの構築が必要です。一方で、樹木のオゾン感受性は樹種によって異なる事、同じ樹種でも土壌や気象といった環境条件によってオゾン感受性が変化することが知られています。そこで樹木生理生態学的視点から、樹木に対するオゾンの影響と、その樹種間差異や他の環境要因との関係を明らかにし、リスク評価のためのプロセスベースモデルを構築する事を目的として研究を進めています。
本学のテニュアトラック制度は、スタートアップ資金、研究の独立性、学内業務の軽減などにより、若手研究者がキャリアをスタートするのに最適な環境を提供している制度だと思います。メンターの先生からも適切なアドバイスを頂ける環境で、安心して研究を開始することができました。また、同じ世代のテニュアトラック教員が多く在籍していますので、その方々との交流を通して、多くの刺激を受けられるのも魅力的な点だと思います。もちろん任期付きで、常に成果を求められる環境ではありますが、それが本当の意味で自立した大学教員になる為に必要なハードルではないかと考えています。
化石燃料の利用に支えられた20世紀を終えて、持続可能な社会の実現を目指す21世紀においては、植物という再生可能な資源の積極的な利用を進める必要があります。その植物の生産に悪影響をおよぼす大気汚染を始めとした大気環境の変化は、人類が解決しなくてはならない大きな課題です。私はこの課題に対して、樹木生理生態学の視点から、使命感を持って取り組んでいきたいと思います。また、将来の環境を担っていく次世代の育成にも、しっかりと取り組んでいきたいと思います。特に、様々な環境問題に対する具体的な解決策を、科学的視点から提示・遂行できる人材の輩出を目指していきたいと考えています。