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国立大学法人東京農工大学
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本事業は文部科学省科学技術人材育成費補助金の「テニュアトラック普及・定着事業」の補助を受けて実施しています。

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テニュア取得教員の紹介

花﨑 逸雄 (Hanasaki Itsuo)

研究院 工学研究院
部門 先端機械システム部門
研究分野 応用力学
キーワード ナノ・マイクロ,(非平衡)統計力学,(非線形)力学系,揺らぎ
URL http://web.tuat.ac.jp/~ihlab/
職歴

・2006年04月~2007年03月:京都市地域結集型共同研究事業 研究員
・2007年04月~2008年12月:日本学術振興会 特別研究員PD
・2009年01月~2012年08月:神戸大学大学院工学研究科機械工学専攻 助教
・2012年09月~2015年06月:大阪大学大学院基礎工学研究科機能創成専攻 助教
・2015年07月~2020年06月:東京農工大学工学研究院(テニュアトラック推進機構)テニュアトラック特任准教授
・2020年07月~現在:東京農工大学大学院工学研究院 准教授(テニュア取得)

学歴

・2002年3月:大阪大学工学部応用理工学科 卒業
・2003年3月:大阪大学大学院工学研究科知能・機能創成工学専攻 短縮修了
・2006年3月:大阪大学大学院工学研究科知能・機能創成工学専攻 修了

受賞歴

※最新情報は教員のWebサイトをご覧ください
(2020.7現在)
・2002年:大阪大学工学賞
・2002年:IA award
・2006年:大阪大学論文100選
・2014年:日本機械学会奨励賞(研究)
・2015年:大阪大学総長奨励賞(研究部門)
・2017年:Sci. Technol. Adv. Mater.誌のEditor's Choice Collection 2017,
・2017年:Sci. Technol. Adv. Mater.誌のInfluential Papers 2017.
・2018年:東京農工大学学長賞(農工融合論文発表部門)
・2019年:Nanoscale Advances誌の「Most popular articles published in Nanoscale Advances so far」選出.
・2019年:第30期可視化情報学会奨励賞

主な論文・解説

※最新情報は教員のWebサイトをご覧ください
(2020.7現在)
・Itsuo Hanasaki, Kazuki Okano, Hiroshi Y. Yoshikawa, and Teruki Sugiyama, "Spatiotemporal dynamics of laser-induced molecular crystal precursors visualized by particle image diffusometry”, Journal of Physical Chemistry Letters, Vol.10, pp.7452-7457, 2019.
・Itsuo Hanasaki, Takahiro Nemoto, and Yoshito Tanaka, “Soft trapping lasts longer: Dwell time of a Brownian particle varied by potential shape”, Physical Review E, Vol.99, 022119 (6pages), 2019.
・Reiji Motohashi and Itsuo Hanasaki, “Characterization of aqueous cellulose nanofiber dispersions from microscopy movie data of Brownian particles by trajectory analysis”, Nanoscale Advances, Vol.1, pp.421-429, 2019.
・Itsuo Hanasaki and Jens H. Walther, “Suspended particle transport through constriction channel with Brownian motion”, Physical Review E, Vol.96, 023109 (8 pages), 2017.
・Yuto Ooi, Itsuo Hanasaki*, Daiki Mizumura, and Yu Matsuda, “Suppressing the coffee-ring effect of colloidal droplets by dispersed cellulose nanofibers”, Science and Technology of Advanced Materials, Vol.18, pp.316-324, 2017.
・Itsuo Hanasaki and Yoshitada Isono, "Detection of diffusion anisotropy due to particle asymmetry from single-particle tracking of Brownian motion by the large-deviation principle", Physical Review E, Vol.85, 051134 (9 pages), 2012.
・Itsuo Hanasaki, Jens H. Walther, Satoyuki Kawano, and Petros Koumoutsakos, "Coarse-grained molecular dynamics simulations of shear-induced instabilities of lipid bilayer membranes in water", Physical Review E, Vol.82, 051602 (6 pages), 2010.
・Itsuo Hanasaki and Akihiro Nakatani, "Flow structure of water in carbon nanotubes: Poiseuille type or plug-like?", The Journal of Chemical Physics, Vol.124, 144708 (9 pages), 2006.

研究紹介

力学(Mechanics/Dynamics)を駆使して新たな価値を生み出す機械工学(Mechanical Engineering)において,特に要素が集まって全体が構成される仕組みを扱う力学((非平衡)統計力学)や時々刻々変化していく仕組みを扱う力学((非線形)力学系)の切り口から,主にナノ・マイクロ系を扱う技術を体系化するような分野横断的な研究を展開しています.

例えば,一分子計測,光操作技術,あるいは流体中に分散する微粒子群の挙動を扱う各種ナノテクノロジーでは,目的の機能を実現するためにブラウン運動のような現象に対処する必要があります.従来の見方では,熱揺らぎはノイズとして忌避されてきましたが,対象自体が示す揺らぎは本質的な特徴であり計測に有用な情報も秘めています.そして,熱揺らぎに支配された「ビッグデータ」を的確に活用するためには,それにふさわしい応用力学が必要です.

また最近では,メタマテリアルのように要素と全体の関係をかつてない形で機能に結びつける研究が盛んです.膨大な試行錯誤を必要とするモノ作りでも,開発は暗黙のうちに何らかの前提や考え方に基づいて進められます.したがって,カルノーの時代から200年を経た今,材料のミクロな自由度をデバイスのマクロな機能へ結びつけるには,熱揺らぎを考慮した新たな熱力学に基づく設計指針が重要になります.

このような着眼点は,卓越した技術力を持ち開発を基軸とする研究者達から,現場での切実なニーズとして近年になって急速に理解され始め,これから共に協力しながらイノベーションへ展開していこうとしています.私達が目指すのは,縦糸に対する横糸のように各分野をつなぎ,「“モノ”を最大限活かす“コト”のデザイン」となるような研究です.

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本学のテニュアトラック事業について

独自のビジョンを持つ研究者が研究室を主宰することにより新しいアイディアを試す裁量が与えられるのは貴重なことです.絵画における印象派の経過などを見れば,やがてその価値を多くの人が認めるコンセプトも,当初多数派受けしない時期を経る場合があることがわかります.学会発表で鈍い反応だったアイディアの中にも,良い専門誌に掲載しておけば,推移の速い分野で10年近く経ってもNature関連誌等から引用され続ける場合もあります.本事業は,短期的には数値評価可能な側面で評価されますが,長期の後に振り返ると,色々な研究者の新しい研究が芽生えた時期を支えた事業だったと質的にも高く評価され得る可能性を秘めたものでもあると思います.

今後の抱負

イノベーションと言われる成果も必ず先人の知見がどこかに活きています.琳派という独自ジャンルを認知される尾形光琳の作品も,基礎を踏まえた型破りだからこそ紅白梅図屏風のような優れた対比に結実しています.モノを基軸とする技術開発の手腕と,普遍的な数理を的確に扱うセンスには異なる側面があり,両者を的確につなぐのは決して簡単ではありません.そのため,既存の理論を拡張して先入観の枠を壊す新しい理論的な知見は,往々にして実用的真価を理解されず活かされる機会を待っています.私は共感してくれる方々と一緒に,アカデミズムとイノベーションをつなぐ研究成果を上げ,大学らしい強みの一端を示していきたいと考えています.