国立大学法人東京農工大学
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花﨑 逸雄 (Hanasaki Itsuo)
研究院 | 工学研究院 |
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部門 | 先端機械システム部門 |
研究分野 | 応用力学 |
キーワード | ナノ・マイクロ,(非平衡)統計力学,(非線形)力学系,揺らぎ |
URL | http://web.tuat.ac.jp/~ihlab/ |
職歴 | ・2006年04月~2007年03月:京都市地域結集型共同研究事業 研究員 |
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学歴 | ・2002年3月:大阪大学工学部応用理工学科 卒業 |
受賞歴 | ※最新情報は教員のWebサイトをご覧ください |
主な論文・解説 | ※最新情報は教員のWebサイトをご覧ください |
力学(Mechanics/Dynamics)を駆使して新たな価値を生み出す機械工学(Mechanical Engineering)において,特に要素が集まって全体が構成される仕組みを扱う力学((非平衡)統計力学)や時々刻々変化していく仕組みを扱う力学((非線形)力学系)の切り口から,主にナノ・マイクロ系を扱う技術を体系化するような分野横断的な研究を展開しています.
例えば,一分子計測,光操作技術,あるいは流体中に分散する微粒子群の挙動を扱う各種ナノテクノロジーでは,目的の機能を実現するためにブラウン運動のような現象に対処する必要があります.従来の見方では,熱揺らぎはノイズとして忌避されてきましたが,対象自体が示す揺らぎは本質的な特徴であり計測に有用な情報も秘めています.そして,熱揺らぎに支配された「ビッグデータ」を的確に活用するためには,それにふさわしい応用力学が必要です.
また最近では,メタマテリアルのように要素と全体の関係をかつてない形で機能に結びつける研究が盛んです.膨大な試行錯誤を必要とするモノ作りでも,開発は暗黙のうちに何らかの前提や考え方に基づいて進められます.したがって,カルノーの時代から200年を経た今,材料のミクロな自由度をデバイスのマクロな機能へ結びつけるには,熱揺らぎを考慮した新たな熱力学に基づく設計指針が重要になります.
このような着眼点は,卓越した技術力を持ち開発を基軸とする研究者達から,現場での切実なニーズとして近年になって急速に理解され始め,これから共に協力しながらイノベーションへ展開していこうとしています.私達が目指すのは,縦糸に対する横糸のように各分野をつなぎ,「“モノ”を最大限活かす“コト”のデザイン」となるような研究です.
独自のビジョンを持つ研究者が研究室を主宰することにより新しいアイディアを試す裁量が与えられるのは貴重なことです.絵画における印象派の経過などを見れば,やがてその価値を多くの人が認めるコンセプトも,当初多数派受けしない時期を経る場合があることがわかります.学会発表で鈍い反応だったアイディアの中にも,良い専門誌に掲載しておけば,推移の速い分野で10年近く経ってもNature関連誌等から引用され続ける場合もあります.本事業は,短期的には数値評価可能な側面で評価されますが,長期の後に振り返ると,色々な研究者の新しい研究が芽生えた時期を支えた事業だったと質的にも高く評価され得る可能性を秘めたものでもあると思います.
イノベーションと言われる成果も必ず先人の知見がどこかに活きています.琳派という独自ジャンルを認知される尾形光琳の作品も,基礎を踏まえた型破りだからこそ紅白梅図屏風のような優れた対比に結実しています.モノを基軸とする技術開発の手腕と,普遍的な数理を的確に扱うセンスには異なる側面があり,両者を的確につなぐのは決して簡単ではありません.そのため,既存の理論を拡張して先入観の枠を壊す新しい理論的な知見は,往々にして実用的真価を理解されず活かされる機会を待っています.私は共感してくれる方々と一緒に,アカデミズムとイノベーションをつなぐ研究成果を上げ,大学らしい強みの一端を示していきたいと考えています.